なぜか目玉焼きの味付けにそれぞれのこだわりがあったり、はじめてたまごを割った日のこと覚えていたり。たまごがあるって当たり前のようで、少し特別。その“当たり前”が、ちょっといいなと私たちは思っています。「たまごと暮らし」の連載では、北坂養鶏場の常連さんや、お得意さんにお話を伺い、たまごのある暮らしをのぞかせてもらいます。
今回お話を伺ったのは「たまご自販機の常連さん」。北坂養鶏場のある北淡地域で生まれ育ち、現在も同じエリアに暮らす山下さんです。
「明石海峡大橋がかかる前のことですけど、このあたりの商店で売ってるたまごは、当たり前に北坂さんのものでした。だから特別に意識することはなくて、幼いころから自然と食べていました」。
それは大人になって、家族ができた今も変わりません。ごはんの支度中にたまごが無くなれば「自販機で買ってきて~」と家族におつかいを頼むそうです。「そうそう、我が家の3兄弟は、みんなはじめてのおつかいがたまご自販機なんですよ」。
たまごが切れてると気づいたある日のこと。「ホットケーキが食べたい!」という一番下の妹さんの発案で、パジャマ姿のまま、兄弟で手をつないでおつかいへ。山下さんは家からその様子をじっと見守っていたそうです。兄弟が大きくなった今でも、家族の中で小さな冒険は語り継がれています。
直売所ができた頃から“選べる楽しみ”も増えたとか。「我が家はMSやMを好んで買っています。冷蔵庫の引き出しにぴったり納まるっていうのもあるけど、料理するにもちょうどいいんです。さくらともみじ、料理にあわせて選んでます。うちの夫はもみじがお気に入り」と、昔からの顔なじみだけあって、選び方も慣れている山下さん。
「直売所で販売している八角形の箱入りたまごも気に入ってます。見た目もかわいいから、使い終わったら冬はミカン箱にしたりして。商品の種類がいろいろあって、その中からぴったりのたまごを選べるって、他にはないことですよね。今日お話ししながらすごく贅沢だなって振り返っています」。
たまごを選ぶ理由が、サイズだったり、味だったり、気分だったり。毎日に馴染んでいる様子に、私たちもうれしい気持ちを隠さずにはいられません。
「本当にたまたまですけど、今夜は娘のリクエストでオムライスです」と、最後まで、たまごにぴったりな話題を届けてくれた山下さんでした。それでは、次回もお楽しみに。