北坂養鶏場は、様々な人の手を介して生産物をお届けしています。ニワトリたちの環境を見守る人、お客さまにたまごを届ける人、鶏糞を生かした肥料をつくる人。多様な人々とその仕事が、ひとつまたひとつと混じりあうことで北坂養鶏場が成り立っています。「はたらく人」では、北坂養鶏場の人々の話に耳を傾け、はたらきぶりや暮らしぶりを探っていきます。今回は2025年度に入社した、王地さんにお話をお伺いします。
―この春に新卒採用でご入社されたとか。王地さんのご出身はどちらですか?
和歌山県出身で、島根で大学生活を送って淡路島へやってきました。もともと自然が好きで、農学部で土壌生物や成分分解性プラスチックなど、土にまつわる研究をしていました。
―地元も大学もまったく違う場所から、淡路島へこられたんですね。
中学生の頃に林間学校で南あわじ市に滞在したことがあって。海も山も近く、自然が豊かで、ゆったりした時間の流れが記憶に残っていました。
―淡路島に絞って就職活動されていたんですか?
実は違う会社に内定をいただいていたんです。4回生の夏、就活を終えて、最後の学生生活を送りながら「本当にやりたいことに向きあっていけるかな」と、心に迷いが残っていることに気がつきました。
改めてこれまでのことを振り返っていた時に、記憶に残っていた淡路島のことを思い出したんです。淡路島で働くイメージを描いてみたら、未知の場所で挑戦したい気持ちがむくむく膨らんでいきました。
―もう一度、就職活動するのは勇気がいりませんでしたか?
人生一度きりだし、嬉しいこと、楽しいこと見つけて生きていきたいじゃないですか。むしろワクワクしてました。淡路島で仕事を探す中で北坂養鶏場を知り「養鶏場で働いてる人って出会ったことないな!」って。
8月になっていたので北坂養鶏場の説明会などはすでに終わっていました。この際だから聞いてみるだけ聞いてみたらいいや!って問い合わせフォームから、募集されてませんかって投げかけてみたんです。
―行動力が旺盛です!
社長が受け止めてくださってよかったです笑。最初はオンラインでお話させてもらって、その後、雰囲気をつかめたらとイベント出店のお手伝いをさせてもらいました。
―出店のお手伝いはいかがでしたか?
いい意味で「ゆるさ」を感じました。社長も「きたかったらどう?」って、押し付けることなく、さくっと誘ってくださって。イベント中は「いつもありがとう」と、お客さまが声をかけてくださることに驚きました。こんなにお客さんと近いの?って。
―なるほど。
売る買うだけじゃない、やわらかな関係性があるんだなと。僕自身、人と人がつながる感覚を大切にしたいので、この輪の中でなら、自然体で仕事ができそうだなと。
―入社してみてその印象は変わりませんか?
同期がいなくて一人入社だったんですが、おもしろい入社式を考えてくださって……!平飼い小屋ににわとりを入舎させるっていうプログラムだったんですけど、そんなん他にないですよね!笑。いろいろ考えてくださったんだなって、見守っていただいてることに安心感を覚えました。
―その後はどのように仕事を覚えましたか?
最初の1ヶ月は研修で、社内のいろんな部署を回らせてもらいました。にわとりのいる農場、たまごの選別からパック詰めまでを担うGPセンター。直売所に、出店や配達など、全体を把握できるように色んな仕事をさせてもらいました。
そのなかで、出店と配達のスケジュールが多くて笑。僕自身の希望も営業職だったので「たぶん出店や配達が僕の担当だな」って感じてました笑。
―一番お世話になっている先輩は?
配達の指導をしてくれた颯波(さっぱ)さんです。年齢も近いので話しやすくて、頼りになるお兄さん的存在。配達の手順やルートはもちろん、鶏の扱い方からたまごに関する知識まで、じっくり教えてくださいました。しかも、仕事だけじゃなくて、南あわじのおすすめの休憩スポットとか、そういうことも教えてくださるんです笑。
北坂養鶏場って「担当外」がないんです。たとえば僕は出店・配達担当ですけど、たまごの出荷が立て込んでたらGPセンターに入ったり、逆に配達が立て込んでたら他部署の人が「手伝おうか?」って言ってくれたり。そういうのが当たり前にあるんです。
―素敵な関係性ですね。
特に印象的だったのは、道が分からなくて配達に時間がかかってしまったとき。別の便を担当されてた、大先輩の中尾さんが「こっちは終わったから、あとは任せとき」ってフォローしてくださったんです。ひとりで抱え込まなくていいんやなって、すごくありがたかったです。
―土地勘ゼロからのスタートですが、難しさは感じませんか?
何事も「やってみよう!」がモットーなので、楽しんでます。配達だとこんな道あるんや!とか、出店だと新しい出会いや発見がおもしろくって。たまごの選別やニワトリの移動なんかも応援に入ることがあるんですが、自分で経験したことをリアルに伝えていけるっていうのがいいなって。
―新しい環境を楽しめるって、みんなができることじゃないと思います。
僕にとっては、人との出会いが何よりのモチベーションなので。以前、はじめての場所で出店した時に「なにこのプリン、はじめて見た」って言われたことがあって。「たまごを割らずにつくっているプリンなんですよ!」って、盛り上がったんです。常連さんも少なかったので、改めて純国産鶏のこともご紹介したら「これは買わなあかんな」って!笑。
―新しいお客さまにも出会えたんですね。
その日はプリンは完売、たまごもほぼ完売になりました。興味をもっていただいたこともうれしかったけど、説明がしっかり伝わったんだなって。新しい配達先では、ニワトリの種類についてお話したりすると「今度はもみじを仕入れてみようかな」って言っていただいたり。お客さまの仕事に活かされるって何よりうれしいです。
―今後、挑戦してみたいことはありますか?
まだまだ覚えることばかりですが、もっと北坂養鶏場のことを知ってもらえるような動きができたらいいなと思っています。未開の地で出店したい!笑。
今もたくさんの常連さんがいてくださるんですけど、まだまだ!北坂のたまごを知らない人や、名前は聞いたことあるけど手に取ったことはないっていう人も、出会っていきたいです。
―「はじめて見た」っていうお客さまもいらっしゃいましたもんね。
そうなんですよ。ただ「淡路島のたまごですよ」って売るんじゃなくて、純国産鶏のこと、育てる環境や人、どんなたまごなのかを伝えて興味を持ってもらいたい。それって、現場を見て、体験してるからこそできる部分だと思うので。
―王地さんの力が活かされますね!
人と話すのが好きですから!笑。出店先や配達の場で、もっとお客さんとの距離を縮めていきたいなって。あとは社内でも、もっと部署を越えて動けたらいいなと思ってます。僕が現場のことを知れば知るほど、農場の人やGPの人たちが積み重ねてきた厚みを伝えられると思うんです。
―すでに枠を超えて動いていそうです。
ありがとうございます。やったことないことをやってみる。やれるかどうかより、おもしろそうかどうか。これからも、そういう感覚を大切にして、もっともっと動いていきたいです!
―活躍を期待してます!今日はありがとうございました。
ありがとうございます!
王地麗偉 出店・配達担当
王地さんのとある一日
王地さんを知るQ&A
なくてはならない仕事道具は?:配達先に行くための地図、iphoneは必須!
うまくいかないときの対処法:一旦、別のことする。夢の中で解決する。
あなたにとって、北坂養鶏場とは?:挑戦する場所。
みんなからみた王地さん
・おしゃべりが好き、3倍で話し返してくれる。
・よく喋って、よく笑う子。
・お花、パン、スイーツが好きで野球やお酒も詳しい。