北坂養鶏場

はたらく人はたらく人

生き物とはたらくこと

鶏舎 除糞・修理担当:青木 雄さん 2022年8月

第八回目となる「はたらく人」。このインタビューは北坂養鶏場ではたらくさまざまな人の話に耳を傾け、はたらきぶりや暮らしぶりを探る連載です。今回は農場で除糞や修理を担う、青木さんにお話を伺いました。

“農場”の仕事ってなに?

-青木さんは入社3年目と伺いました。どのようなお仕事を担当されているのですか? 養鶏場で農場というと、鶏のいる鶏舎が主な活動場所になります。僕は、農場の除糞や鶏舎の各種機器の修理、鶏たちの環境チェックや、消毒や洗浄などが主な役割です。あとたまに鶏舎の中で逃げ回ってる鶏を捕まえるとかもやってます笑。
-鶏って逃げるんですね笑。 すごく、すばしっこいですよ笑。
逃走した鶏を網で捕らえたところ。
-「修理」という仕事の担当があることも驚きです。 北坂養鶏場は中規模の養鶏場です。成鶏の鶏舎だけでも6棟あって、そこに約2万羽の鶏がいます。ケージと餌や水をやる機械が数十台あり、たまごを集める大きな機械も毎日稼働しています。鶏のケージの扉がおかしくなったり、集卵ベルトが切れてしまったり。種類もさまざまで膨大な数の道具や機械があるので、日々どこかしら手をかけなければなりません。
-すべての修理を担うとなると、多くの知識が必要ですね。 2年目から先輩に徹底的に教えてもらいました。1年間経験を積んでも、やったことのない修理がほとんどです。今では仕組みがわかればなんとかなるようになってきましたが、指導いただいた先輩も春に引退されたので、僕が主に担当させてもらっています。
-「修理」や「除糞」など、農場の仕事にはいくつか担当分けがあるんですね。 これまでそれぞれに仕事を分担してきたのですが、同じ人が同じ仕事を担当し続けると、その人しかわからない状況になって困ったり、身体的に負荷が多いことがわかってきたんです。ですから、農場の仕事をすべて洗い出して、みんながどの仕事もわかるよう再編成しているところです。

ちょうど今年入社してきてくれた新入社員さんも農場に2人いるので、みんなが農場の仕事を理解しあって、はたらきやすい環境にできたらいいなと思っています。

鶏糞からつくる「島の土」って?

-北坂養鶏場には、除糞された鶏糞からつくる「島の土」という商品がありますね。 「島の土」は、鶏糞とおがくずと発酵菌を混ぜて2年以上発酵させてつくる発酵鶏糞です。僕が担っているのは、その発酵前の処理。

北坂養鶏場には高床式の鶏舎が4棟、ウィンドレスという鶏舎が2棟あって、処理方法が異なります。高床式は下の空洞に鶏たちの糞が落ちるようになっていて、2日に一回くらいトラクターでかき混ぜて鶏糞を乾燥させています。ウィンドレスは全自動なのでその作業がない代わりに、3日に一度ダンプで鶏糞を回収して撹拌所に持っていく必要があります。

-除糞というととても大変なイメージです。 除糞をさぼっちゃうとベチャベチャになって、鶏のいるところまでアンモニア臭が漂ってしまいます。しんどくないというと嘘になりますが、鶏たちのいい環境をつくる上でも養鶏には欠かせない作業です。

-「島の土」のことなら青木さんに聞けばわかると、みなさんから伺いました。 入社してからずっと関わってきた仕事なので「島の土」のことなら何でも答えられるようになりました。北坂養鶏場はこうした鶏糞をつかった土づくりをはじめ、たまごの直売所や卸、たまごプリンの製造など、養鶏にまつわる仕事をほぼ網羅しています。こうした一貫した環境に身をおくことはなかなかできないので、恵まれた場所で経験を積めているなと思っています。

大切にしたい気持ち

-青木さんは第二回目にお話を伺った柴田さんと同じ動物専門学校の出身だそうですね。もともと、動物に関わるお仕事がされたかったんですか? 小さな頃から生き物が好きで、高校も農業高校に進学しました。いずれ第一次産業に関わりたいなと思っていて、高校ではトマトを育てていました。

-スタートは野菜からだったんですね。 農業高校でつくるトマトというので、地元ですごく人気があったんですよ。日々、ガラスハウスで世話をしながら「種があって苗があって水と太陽と土があって。こんなに売れてるけど、人間がいるだけでトマトができるわけじゃないんだな~」って当たり前のことに気付かされました。

-そこからなぜ養鶏に目が向いたんですか? ひととおり農業を経験してみて、やっぱり第一次産業だなって。次は生き物に関わる仕事を経験してみたいと動物専門学校に進学しました。動物園の飼育員にも興味はありましたが、いろんなゼミ紹介をみていて鳥が好きだったこともあって「養鶏」に目が止まりました。実際に北坂養鶏場に研修に来て養鶏の現場を経験したり、直売所横のヤギ小屋をつくったりして「ここ、いいな!」って。

-実際に養鶏場に身をおいてみていかがですか? トマトで経験したことと同じように、僕ら人間がいるだけじゃたまごも何も生まれないんだなっていうことを痛感しています。鶏のおかげでたまごが食べられるんだなって。

だから鶏たちの環境はなるべく整えてあげたい。ただ、どれだけがんばっても、何万羽という鶏の中には真夏の暑さにやられたり、先天的な原因があったり、どうしても死んでしまう鶏がいて……。減らすことはできるけど、それにも限界があります。

-生き物と仕事しているわけですもんね。 適当にやってたまごができるわけじゃないから、こうした部分も含めて生き物には感謝しようって。供養の気持ちと感謝の気持ちも持ちながら、鶏と仕事しています。

いつか実現したいこと

-これから、青木さんが取り組んでみたいことってありますか? 北坂養鶏場で覚えることがまだたくさんあるので、かなり先のことですが、日本の畜産業界をいろいろ経験してみたいです。牛や豚も、魚だったら養殖場も。他の養鶏場はどんな風にやってるんだろうとか、他の動物だとどうなるんだろうって気になるんですよね。

-なにかきっかけがあったのでしょうか? 地元の幼なじみが牛を飼っていて、お互いの仕事の話をよくするんです。その中でよく話題に上がるのが、僕たちのような若手世代が畜産に興味をもってくれたらいいなという話です。だからいろんな畜産の現場を見て、なにかその解決の糸口がつかめたらいいなって。

-とても興味深いです。 僕は今の仕事も、牛や豚を飼うこともすごくおもしろいことだって思ってるんです。だから少しでも興味をもってくれた人が関わりやすいように、畜産業界のハードルが低くなれば……。

まだまだ先のことですけど、僕が経験させてもらってるみたいに、若手が関わりやすい畜産の仕事を自分の手でいつかつくれたらいいなって夢見ています。

青木 雄 農場 除糞・修理担当

青木さんのとある一日

  • 出社
  • 餌が足りているか鶏舎を見まわり
  • 鶏舎の各種機械の修理
  • 鶏糞のトラクター作業
  • 洗浄・消毒
  • 終業

 青木さんを知るQ&A 

休日の過ごし方は?:友だちとオンラインゲーム

うまくいかないときの対処法:
小学校からの幼なじみに電話しながら話を聞いてもらう。

なくてはならない仕事道具は?:
両手があればなんとかなる!修理もトラクターの運転も。

みんなからみた青木さん

・力持ち!普段から鍛えてそう〜。
・年間スケジュールから逆算して計画をしっかり作ってくれている。
・困ったらなんでも相談できる。頼りにしてます!