鶏舎 除糞・修理担当:青木 雄さん 2022年8月
第八回目となる「はたらく人」。このインタビューは北坂養鶏場ではたらくさまざまな人の話に耳を傾け、はたらきぶりや暮らしぶりを探る連載です。今回は農場で除糞や修理を担う、青木さんにお話を伺いました。
-北坂養鶏場には、除糞された鶏糞からつくる「島の土」という商品がありますね。
「島の土」は、鶏糞とおがくずと発酵菌を混ぜて2年以上発酵させてつくる発酵鶏糞です。僕が担っているのは、その発酵前の処理。
北坂養鶏場には高床式の鶏舎が4棟、ウィンドレスという鶏舎が2棟あって、処理方法が異なります。高床式は下の空洞に鶏たちの糞が落ちるようになっていて、2日に一回くらいトラクターでかき混ぜて鶏糞を乾燥させています。ウィンドレスは全自動なのでその作業がない代わりに、3日に一度ダンプで鶏糞を回収して撹拌所に持っていく必要があります。
-除糞というととても大変なイメージです。 除糞をさぼっちゃうとベチャベチャになって、鶏のいるところまでアンモニア臭が漂ってしまいます。しんどくないというと嘘になりますが、鶏たちのいい環境をつくる上でも養鶏には欠かせない作業です。
-「島の土」のことなら青木さんに聞けばわかると、みなさんから伺いました。 入社してからずっと関わってきた仕事なので「島の土」のことなら何でも答えられるようになりました。北坂養鶏場はこうした鶏糞をつかった土づくりをはじめ、たまごの直売所や卸、たまごプリンの製造など、養鶏にまつわる仕事をほぼ網羅しています。こうした一貫した環境に身をおくことはなかなかできないので、恵まれた場所で経験を積めているなと思っています。
-青木さんは第二回目にお話を伺った柴田さんと同じ動物専門学校の出身だそうですね。もともと、動物に関わるお仕事がされたかったんですか? 小さな頃から生き物が好きで、高校も農業高校に進学しました。いずれ第一次産業に関わりたいなと思っていて、高校ではトマトを育てていました。
-スタートは野菜からだったんですね。 農業高校でつくるトマトというので、地元ですごく人気があったんですよ。日々、ガラスハウスで世話をしながら「種があって苗があって水と太陽と土があって。こんなに売れてるけど、人間がいるだけでトマトができるわけじゃないんだな~」って当たり前のことに気付かされました。
-そこからなぜ養鶏に目が向いたんですか? ひととおり農業を経験してみて、やっぱり第一次産業だなって。次は生き物に関わる仕事を経験してみたいと動物専門学校に進学しました。動物園の飼育員にも興味はありましたが、いろんなゼミ紹介をみていて鳥が好きだったこともあって「養鶏」に目が止まりました。実際に北坂養鶏場に研修に来て養鶏の現場を経験したり、直売所横のヤギ小屋をつくったりして「ここ、いいな!」って。
-実際に養鶏場に身をおいてみていかがですか?
トマトで経験したことと同じように、僕ら人間がいるだけじゃたまごも何も生まれないんだなっていうことを痛感しています。鶏のおかげでたまごが食べられるんだなって。
だから鶏たちの環境はなるべく整えてあげたい。ただ、どれだけがんばっても、何万羽という鶏の中には真夏の暑さにやられたり、先天的な原因があったり、どうしても死んでしまう鶏がいて……。減らすことはできるけど、それにも限界があります。
-生き物と仕事しているわけですもんね。 適当にやってたまごができるわけじゃないから、こうした部分も含めて生き物には感謝しようって。供養の気持ちと感謝の気持ちも持ちながら、鶏と仕事しています。
-これから、青木さんが取り組んでみたいことってありますか? 北坂養鶏場で覚えることがまだたくさんあるので、かなり先のことですが、日本の畜産業界をいろいろ経験してみたいです。牛や豚も、魚だったら養殖場も。他の養鶏場はどんな風にやってるんだろうとか、他の動物だとどうなるんだろうって気になるんですよね。
-なにかきっかけがあったのでしょうか? 地元の幼なじみが牛を飼っていて、お互いの仕事の話をよくするんです。その中でよく話題に上がるのが、僕たちのような若手世代が畜産に興味をもってくれたらいいなという話です。だからいろんな畜産の現場を見て、なにかその解決の糸口がつかめたらいいなって。
-とても興味深いです。
僕は今の仕事も、牛や豚を飼うこともすごくおもしろいことだって思ってるんです。だから少しでも興味をもってくれた人が関わりやすいように、畜産業界のハードルが低くなれば……。
まだまだ先のことですけど、僕が経験させてもらってるみたいに、若手が関わりやすい畜産の仕事を自分の手でいつかつくれたらいいなって夢見ています。
青木 雄 農場 除糞・修理担当