北坂養鶏場

はたらく人はたらく人

運んできて、運んでいく

配送担当:北坂俊哉さん・坂口功さん 2022年10月

北坂養鶏場には、鶏に関わる人から、たまごを販売する人、さらにたまごを運ぶ人まで、さまざまな人がいます。「はたらく人」の連載では、ここで営みを重ねる人たちの話に耳を傾け、はたらきぶりや暮らしぶりを探っていきます。第十回目は北坂養鶏場と島の外をつなぐ配送担当のおふたりにお話を伺いました。

餌はどこからやってくる?

左が北坂さん、右が坂口さん
-配送担当というと、島内を配達するお仕事とはまた違う役割なんですよね? 北坂さん:配達は島の中にある事業者さんや自動販売機の納品が主です。私たちが担当している「配送」は島の外との関わりです。なかでも、私が担当しているのは大人の鶏たちの餌の配送です。
-大人の鶏たちの餌ですか。自社で餌を運搬されているとは知りませんでした。 北坂さん:そうですね、配達してもらっているところもあると思います。私は、約25年前の明石海峡大橋が開通した時に「自社のトラックで餌を配送しようと思ってる。よかったら手伝ってくれへんか」と、先代の社長に声をかけてもらって来るようになりました。
配送の朝は早い。朝5時半頃に養鶏場を出発するのが日常。 このトラックは餌の配送専用。
-北坂さんが運ばれているのは大人の鶏の餌だけなんですか? 北坂さん:そうですね、雛とは餌が違いますから。雛たちの餌は自分たちで配合したものを使っています。昔は大人の鶏の餌も自社で配合してたんですよ。いまはこちらが決めた配合で、餌屋さんにつくってもらっています。餌には「北坂たまご」って名称がついているんですよ。
-オリジナルの配合の餌があるんですね!餌はどこまで、どれくらいの頻度で取りに行かれるのでしょうか? 北坂さん:2箇所あって、四国と神戸のどちらかに伺っています。今はそんなにたくさん行かなくても大丈夫な季節ですが、多いときは一日二回行くときもありますね。
-え!?毎日、餌の配送って必要なですか? 一回でどれくらいの量を運ばれているのでしょうか? 北坂養鶏場のトラックが、13トン収容できるので、一回で13トンですね。夏場は餌を食べる量が減るんで一日一回で事足りますが、寒くなってきて餌を多く食べるようになると、一日二回取りに行くこともあります。
-大変なお仕事ですね。餌を積んで帰ってこられたら、その荷物はどうされるんですか? 北坂さん:鶏舎の横にある餌をためておくサイロというのがあるんで、そこに管を繋いで餌をおろしていきます。餌を運んでおろして。それがだいたいお昼くらいまでに終わるようにしています。
何メートルもあるサイロにのぼって餌を補充する。どんな天気の日も欠かせない仕事。

養鶏場の卵はどこへ行く?

-坂口さんが担当されている配送は、どんな役割なんでしょうか? 坂口さん:私が担当しているのは、島の外へ卵を運ぶ仕事です。
-それって配達で運ぶ卵とはまた違うということですよね。 坂口さん:そうですね、北坂養鶏場では「配達担当」が主に島内の事業者さんをまわっています。私はトラックに乗って、毎日大阪の堺と西宮の工場に卵を運んでいます。「配達」と「配送」の違いは大型のトラックに乗って、何トンもの卵を島の外へ運ぶところですね。

-一日で堺へ行って帰ってこられるんですか? 坂口さん:そうですよ。堺では運送会社へ運ぶので、卵はさらにその先にある業者に運ばれていきます。堺の帰りに西宮へよって淡路島へ戻ります。西宮は液卵工場なのでそこで加工されるようです。

-これも餌と同じく、自社で配送されているとは知りませんでした。 北坂さん:実は餌も卵も最初は私一人で配達をまかなっていたんですよね。餌を取りに行って帰ってきてまた卵をつんで西宮へ。なんてことしてたらあるとき餌を積みっぱなしで卵を取りに行ってしまったことがあって笑。ひとりじゃちょっと大変だということで坂口さんに来てもらうようになりました。

坂口さん:養鶏場に来る前、ふたりとも同じ運送会社で働いていたんですよ。それで誘ってもらって、私が卵の配送を担当するようになりました。

-どれくらいの量を運べるんでしょうか? 坂口さん:220パックを積んだコンテナを40台くらい積み込めるので、数でいうと9万個弱は運べます。

-すごい量で想像できません! 坂口さん:笑。ほんまやね。

大切に安全に、最後まで

-おふたりはもともと運送業だったんですよね。どれくらい携わってこられたのでしょうか? 北坂さん:私は38年近くでしょうか。
坂口さん;私も40年近く運送業に携わっていますね。

-人生の殆どの時間がトラックに乗っている時間になりますね。車内ではどんなふうに過ごされているのですか? 北坂さん;そう言われるとそうやね笑。車内はやっぱりラジオです。ベタですけど浜村淳さんのラジオはいつも聞いてます。

坂口さん:最近はもっぱらスマホで聞いてますね。昔と違ってずいぶんといろんなものが聞けるようになりました。

-おふたりが配送で大切にされていることってありますか? 坂口さん;当たり前ですけど、安全に大切に最後まで卵を届けることですね。北坂養鶏場に勤める前も運送業でしたが、卵ほど繊細な荷物はありません。昔のトラックはスプリングがきいてなくてね。大変やったなぁ。

北坂さん:そうそう、後ろの扉をあけたらバタバタバタ~って卵がふってくることもあって。そんなときはもう絶望やったな。

坂口さん:走りながらドドン!って車体が揺れると「あ~これはやってもたな」なんてね。

-卵がふってくるなんて惨劇です。 坂口さん:今のトラックはすごく良くなったのでそんなこともほぼないですけど、昔は阪神高速をノロノロと60キロで走ってましたよ。肩が凝って仕方がありませんでした。

-当たり前のように荷物が届く世の中ですけど、ひとつひとつ、届けてくれる方がいて成り立っているんですもんね。 北坂さん:安全に大切に。最後までってなかなか難しいよな。

坂口:ほんまに。自分たちが育てた卵やからね。僕らも安心して食べさせてもらってるものやから、そのまま届くように努めてます。

北坂俊哉 坂口功  配送担当

北坂俊哉さんのとある一日

5:30
北坂養鶏場 出発
7:30
坂出 餌をトラックに積む
11:00
北坂養鶏場に戻る
12:00
昼食
13:00
餌をサイロにおろす
15:00
農場の修理や草刈り
17:00
帰宅

坂口功さんのとある一日

3:30
北坂養鶏場 出発
5:00
堺の運送会社
6:30
西宮の液卵工場
7:30
西宮出発
9:30
淡路島で島の土の配達など
12:00
昼食
15:00
農場の修理や草刈り
17:00
帰宅

 おふたりを知るを知るQ&A 

なくてはならない仕事道具は?:荷物をたくさん運ぶための手袋。

うまくいかない時の物事の対処法は?
どないこない言っても、諦めが肝心。

休日の過ごし方は?:
畑仕事。朝からお酒を呑むのも休日の楽しみ。

みんなからみたおふたり

北坂俊哉さん
・困った人がいると放っておけない。
・よくみんなにジュースを買ってくれる。
・「暑いのう!」「バーカ!」が口癖。
・「今からやるぞ!」といったらみんなついて来る。

坂口功さん
・仕事は「段取り」してからキチンとこなす。
・理論派で、「こうやから、こうなるんや」と説明する。
・キレイ好きで、よくトラックを洗っている。
・話し好きで、孫の話が始まると止まらない。