プリン工場担当:高田佳代さん・草田りつ子さん 2022年6月
北坂養鶏場は、鶏に関わる人から、たまごを販売する人、さらにたまごを加工する人まで、さまざまな「はたらく人」たちがいます。「はたらく人」はここで営みを重ねる人たちの話に耳を傾け、はたらきぶりや暮らしぶりを探っていく連載です。第六回目は「たまごまるごとプリン」をつくるプリン工場のおふたりにお話を伺いました
-北坂養鶏場のプリンは「たまごまるごとプリン」ですよね。どうやってつくられているのか気になります。 草田さん:私もそれが気になって仕方がなかったんです。入社する前にチラシで「たまごまるごとプリン」という文字を見て、それってどんなの?って気になったのが入社のきっかけです。
-製造工程を伺ってもいいですか? 高田さん:まずはたまごを検卵するところからはじめます。殻ごとつかったプリンなのでこの工程がとても大切。割れがないか、割れやすいものがないか、形が歪なものなどを目視で省いていきます。
草田さん:続いて遠心分離機にかけます。殻ごと機械にかけることで白身と黄身がひとつになります。機械にかけられるのはひとつずつなので、1個ずつ進めていきます
-ひとつずつ……、ですか? 高田さん:といっても、一気に12台を同時稼働させます。ふたりだと24台、3人だと36台という感じです。ひとつひとつ順番にセットして、また1台目にセットして……と、繰り返します。そのあと、ちゃんと混ざったか光にあてて確認して準備完了です
-想像以上にひとの手がかかってますね。 草田さん:その後、大きな蒸し器で1000個蒸していきます。66℃まで20分かけて温度を上げて、また20分かけて68℃に。そして最後は73℃で10分~15分蒸すんですがこのあたりは季節によって変わります。
-殻を割るとなめらかなプリンが出てくるのが不思議でしょうがなかったのですが、こういうつくり方だったんですね。 高田さん:最初はこういうレシピじゃなかったんですよ。カチカチな仕上がりで、正直おいしくなくて……笑。草田さんがレシピを研究してくださったんです。
-草田さんが、自主的にですか? 草田さん:もともと料理が好きで、どうにかおいしくならないかなって考えていたんです。たまごは73℃で固まるんですが、この温度帯で蒸す時間を調整するととてもなめらかになることがわかりました。
-なぜレシピを変えようと思われたのでしょう? 草田さん:単純に「おいしいものを売りたい」と思ったからです。今でこそたくさんオーダーいただいていますが、当初はお客様から厳しいご意見をいただくことも多かったので。
-おふたりが、はたらく上で大切にされていることをお伺いできますか? 高田さん:自分にめぐってきた仕事はきちんと“確認すること”ですね。発送作業は、多いときは一ヶ月で2000セットになります。たとえば草田さんがつくってくれた発送伝票も、熨斗が名前在りありなのかなしなのか、ちょっとしたことのようですが、自分自身の目でしっかりダブルチェックするようにしています。
-ひとつ、ふたつのお届けものではないですもんね。 私たちが届けているのは何百、何千というお届け物ですが、お客様に届くのは“ひとつ”のお届け物ですから。
-草田さんはいかがですか? 草田さん:3人で仕事することがほとんどなので“信頼”は欠かせません。高田さんがしっかりダブルチェックしてくれて私のミスを見つけてくれることもあります。「ここ違うよ」って伝えあうこともそうだし、プリンのレシピ変更にしても、しっかりした信頼関係がないとできなかったことだと思います。
-相手のミスなど、言いにくいことを伝えるのって難しいですよね。 草田さん:人間だからミスはしょうがないって思っています。だから、3人で持ちつ持たれつ、フォローしあえればいいなって。
高田佳代(左)・草田りつ子(右) プリン工場担当