北坂養鶏場

はたらく人はたらく人

養鶏場のプリンって?

プリン工場担当:高田佳代さん・草田りつ子さん 2022年6月

北坂養鶏場は、鶏に関わる人から、たまごを販売する人、さらにたまごを加工する人まで、さまざまな「はたらく人」たちがいます。「はたらく人」はここで営みを重ねる人たちの話に耳を傾け、はたらきぶりや暮らしぶりを探っていく連載です。第六回目は「たまごまるごとプリン」をつくるプリン工場のおふたりにお話を伺いました

養鶏場のプリンって?

-プリン工場のお仕事について少し詳しくお伺いできますか? 草田さん:私たちの工場は、北坂養鶏場のたまごをつかった「たまごまるごとプリン」の受注から製造、発送までを担っています。養鶏場のすぐ近くにプリン工場があります。

高田さん:北坂養鶏場が運営する直営通販や、直売所、それ以外にも卸の販売など、いくつかの受注窓口があります。その受注をまとめて管理して、必要な量を割り出し、たまごプリンを製造、そしてお客様にお届けするところまでがプリン工場の役割です。
-高田さんと草田さんが入社されたのはいつ頃ですか? 高田さん:2007年頃です。私が少し早めに入社して、その後草田さんがこられました。

草田さん:プリン工場ができてすぐでした。当時は直売所もなく、立ち上げて間もないWEBの通販だけだったので、受注もそんなに多くなくて。月に二度ほどお手伝いにくるような感じでした。

高田さん:それが徐々に注文が増えていって、今では毎日ここで顔をあわせていますね
-プリン工場は何人体制ではたらかれているのでしょう? 高田さん:現在は3人です。私たちと男性社員の小川さんがいて、受注管理から製造、発送までを3人で役割分担しています

「たまごまるごとプリン」をおいしくする

-北坂養鶏場のプリンは「たまごまるごとプリン」ですよね。どうやってつくられているのか気になります。 草田さん:私もそれが気になって仕方がなかったんです。入社する前にチラシで「たまごまるごとプリン」という文字を見て、それってどんなの?って気になったのが入社のきっかけです。

-製造工程を伺ってもいいですか? 高田さん:まずはたまごを検卵するところからはじめます。殻ごとつかったプリンなのでこの工程がとても大切。割れがないか、割れやすいものがないか、形が歪なものなどを目視で省いていきます。

たまごをひとつひとつ遠心分離機で撹拌していく

草田さん:続いて遠心分離機にかけます。殻ごと機械にかけることで白身と黄身がひとつになります。機械にかけられるのはひとつずつなので、1個ずつ進めていきます

-ひとつずつ……、ですか? 高田さん:といっても、一気に12台を同時稼働させます。ふたりだと24台、3人だと36台という感じです。ひとつひとつ順番にセットして、また1台目にセットして……と、繰り返します。そのあと、ちゃんと混ざったか光にあてて確認して準備完了です

光に当てて混ざったかどうか検卵する。卵白は光を通すので、混ざったかどうか目視で確認できる

-想像以上にひとの手がかかってますね。 草田さん:その後、大きな蒸し器で1000個蒸していきます。66℃まで20分かけて温度を上げて、また20分かけて68℃に。そして最後は73℃で10分~15分蒸すんですがこのあたりは季節によって変わります。

-殻を割るとなめらかなプリンが出てくるのが不思議でしょうがなかったのですが、こういうつくり方だったんですね。 高田さん:最初はこういうレシピじゃなかったんですよ。カチカチな仕上がりで、正直おいしくなくて……笑。草田さんがレシピを研究してくださったんです。

-草田さんが、自主的にですか? 草田さん:もともと料理が好きで、どうにかおいしくならないかなって考えていたんです。たまごは73℃で固まるんですが、この温度帯で蒸す時間を調整するととてもなめらかになることがわかりました。

-なぜレシピを変えようと思われたのでしょう? 草田さん:単純に「おいしいものを売りたい」と思ったからです。今でこそたくさんオーダーいただいていますが、当初はお客様から厳しいご意見をいただくことも多かったので。

-とはいえ決まったレシピを“自主的”に変えるって難しいと思います。まわりの反応はいかがでしたか? 草田さん:上司の小川さんからは「好きにしてください」と言われました笑。

高田さん:普段から、何も言わないけど、ちゃんと責任取るよ。というスタンスです。私もおいしくなるなら大歓迎だなって。

草田さん:改善するといっても変化なので、それをみんながポジティブに受け止めてくれたのでうれしかったです。

15年かけて、築いたもの

-おふたりが、はたらく上で大切にされていることをお伺いできますか? 高田さん:自分にめぐってきた仕事はきちんと“確認すること”ですね。発送作業は、多いときは一ヶ月で2000セットになります。たとえば草田さんがつくってくれた発送伝票も、熨斗が名前在りありなのかなしなのか、ちょっとしたことのようですが、自分自身の目でしっかりダブルチェックするようにしています。

-ひとつ、ふたつのお届けものではないですもんね。 私たちが届けているのは何百、何千というお届け物ですが、お客様に届くのは“ひとつ”のお届け物ですから。

-草田さんはいかがですか? 草田さん:3人で仕事することがほとんどなので“信頼”は欠かせません。高田さんがしっかりダブルチェックしてくれて私のミスを見つけてくれることもあります。「ここ違うよ」って伝えあうこともそうだし、プリンのレシピ変更にしても、しっかりした信頼関係がないとできなかったことだと思います。

-相手のミスなど、言いにくいことを伝えるのって難しいですよね。 草田さん:人間だからミスはしょうがないって思っています。だから、3人で持ちつ持たれつ、フォローしあえればいいなって。

-そういう関係性を築くには、苦労も多そうです。 草田さん:私はめいっぱい無理して仕事してしまう所があって。それを同じように他人にも求めてしまう所がありました。でもひとりひとり、仕事のキャパもテンポも得意不得意も違う。その人のいい所を見つめて、褒めて、一緒に仕事すれば信頼しあえるんだって、高田さんと仕事するようになって気がついたんです。

高田さん:「間違ってるよー!!レッドカードやでー」って厳しく言われることもある一方で「できるようになってたねー」って褒めてもらうことも多いです笑。
-15年かけて積み上げてきた信頼関係ですね。 高田さん:気がつけば15年という感じですけど、今3人で仕事できているのはとても楽しいです。

草田さん:小川さんも、高田さんも、めっちゃ信頼してます。お互いをフォローしながら、これからも一緒にはたらいていけたらいいなと思っています。

高田佳代(左)・草田りつ子(右) プリン工場担当

ふたりのとある一日

  • 出社
  • 受注チェック
  • たまごの撹拌、蒸し上げ
  • 冷ました後、検卵
  • 当日出荷分の梱包
  • それぞれお昼休憩
  • 翌日の出荷準備
  • 終業

 ふたりを知るQ&A 

なくてはならない仕事道具は?
高田さん:撹拌機
草田さん:パソコン

休日の過ごし方は?
高田さん:家業の手伝いと孫の世話

最近気になることは?
ふたり:健康です!笑

みんなからみたふたり

高田さん
・おおらかで力持ち!
・物知りで情報通。聞くとなんでも答えてくれる。

草田さん
・素早い判断と行動でムダがない。
・料理上手